水夏第四章ファーストプレイ感想

作品全体の解釈は全エンディングを見てから書くとして、とりあえずそれまでの繋ぎとして第四章ファーストプレイ時の感想を書いておくことにする。ちなみに、ファーストプレイ時の到達エンドは「夏祭り」であった。最初は何を感じたのか?作品を読み解いた段階でその感想がどう変化したのか?そこら辺を表すのがこの感想の目的である。

序盤〜中盤

ヒロインが名無しだったり主人公が変な夢を見たりと相も変わらずの意味ありげな内容ではあったが、前回書いたように日常描写自体はそれなりに面白いので特にどうと言うこともなく流れていった。

お嬢。お嬢は確かに可愛いが、お嬢の可愛さというのは犬や猫を見て可愛いと思うのと、自分の中では同等である。恋愛対象としてみるにはいささか問題があるのではなかろうか…。

あの二択

お嬢かちとせか、という例の二択について。まじめに考えればとんでもない選択肢である。しかし、いかにもゲーム的な選択肢として結構あっさりと流してしまった。あの流れで、実際にあの選択がその通りに行われることはまず無いだろう、というある種の確信があったからだ。むろん、全く根拠のない甘い考えではあるのだが。またこの時点で、自分の中でちとせは死を免れない存在、という認識があったこともある。ちとせの死が避けられないものである以上、それを助けようとすれば同等の何かを失わなければならない、というのは、自分にとってごく当たり前のこととして受け入れることが出来た。もっとも、その選択権を与えられることの善し悪しは全く別問題であるが。

ラスト

一回読んだだけではよく分からないな、と言うのが一番無難な感想だろう。もっと正直な感想を言えば、質の悪いAirを見せられているような感じがした。構造的なトリックは今までも十分に凄かったが、この章はそれにさらに輪をかけて複雑になっている、と言うか、説明不足である。今までは複雑なトリックを用いてきても、その内容を最後にはきちんと示していた。だが今回は、その必要となる説明が余りにも少なく、有ったとしても非常に不親切で唐突であった。

第三章までのトリックは、改めて読み返さなくても理解できる。核心は実に単純なことだからだ。もちろん改めて読み返せば、シナリオのあちこちに伏線が張られていて細かい台詞一つ取っても実は深い意味があったことに気付かされ、それはそれで十分面白い。だがそれはシナリオを知る上で必須の条件では無かった。わざわざそこまでする必要はなかった。だが第四章は一回読んだだけではまず理解できない。おそらくそれは第四章がマルチエンドであるため、全てのエンディングを見ればそのうちに理解できる、ということなのだろうが、それでもそれまでのようにはっきりとした答えを示しているわけではない。最後はプレイヤーが考えて結論を出さなければならない。

ONE、kanon、Airの一連の作品も、プレイヤーに考えることを要求してくる。しかし仮に考えることを放棄しても、そこにはしっかりとした物語が存在している。それだけでも十分楽しむことが出来るだけの作品達だ。しかしこの作品で考えることを放棄してしまうと、実に取って付けた陳腐な物語しか残らない。ここまで引っ張っておいて結局なんだったの?という感想しか残らない。だから、出来の悪いAirと感じてしまったのだ。

制作者の姿勢

あえてプレイヤーを突き放すそのやり方、プレイヤーに考えることを強要するその姿勢、私がここから感じたことは一つ、このシナリオライターの姿勢が同人的な意識からきている、ということだ。言い換えれば、プロになり切れていないのではないか?ということである。プレイヤーのために書くということに徹し切れていない、シナリオライターの自己満足を優先させてしまっているように感じてしまうのだ。

もちろん同人には同人の良さがあるし、商業作品から同人的姿勢を全て排除しろと言うつもりもない。しかしこの作品では、商業作品に持ち込むべきではない同人的姿勢を感じてしまったのだ。私がこの作品を好きになれない原因は、ここにあるものと思われる。

まとめ考察と総合評価に続く。

#今回手抜きで申し訳ないです。